義経

テーマ ・ 国内旅行 カテゴリ ・ なし #16969
今はお心変りなさつたのでございましょうか。去る夏の頃か
ら、からだもた,ならぬようす。日一日と苦しくなるばかりでございます。鎌倉の兵衛佐殿
は冷酷な人ときいております。もし私が捕えられでもしたら、東国へ送られるのでしょうが、
それが心配でなりません。判官妓がどうしても連れて下さらぬとあればどうしようもないの
ですが……」
と涙にくれて訴えるのです。
そこへ義経が姿を見せて、
「気短かな恨み言をいうものではない。こうして義経が迎えに来たではないか」などという
と、姫君は夢でも見ているような気持で、とめどもなく涙を流されるのでした。
やがて弁慶の介添いで北の方の旅立ちの仕度がととのえられます。
清水を流したような見事な御髪を、腰のあたりで断ち切り、唐輪に高く結い上げ、薄化粧
に眉細くひき、御服装も稚児姿に仕立てられ、綾の脚絆にわら沓、小刀を腰に、漢竹で作っ
た笛を手に、首には法華経を入れた錦の袋をかけ、自分の身一つさえ持てあますのに、なれ
ぬ物を身につけて、今はしまりのないお姿に見えた。
こうして北の方は身仕度をととのえ終わり、今出川の邸を出ようとするところへ、北の方
のお守り役の十郎権頭兼房がこれを聞いて駈けつけ、
「代々什えて来たご主人を、どうして妻子に思いかえることができましょうか。

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